自然数の代数的性質について
自然数は代数の視点から見れば、一元集合(要素を一つしか持たない集合)を基底とする自由モノイドです。この代数的条件を身近なレベルにまで書き下すと、これは底と指数関数に関する性質を表しています。ここでは、まずは指数関数の性質をいくつか整理して、それらを代数の言葉に翻訳するということを行います。これは文字列にも拡張できるので、文字列の代数的性質への理解の補助線を与えるでしょう。自然数がモノイドであること
自然数上には足し算+という結合的な二項演算が存在し、また、0という足し算について単位元である特別な数も存在します。これらの条件は、自然数がモノイドであるということを意味しています。自然数と指数関数
指数関数の定義
Nを自然数の集合、Mを乗法・と単位元eを持つ任意のモノイドとします。Mの任意の元xが与えられたとき、xを底とする指数関数x^ : N → M を次のように定義できます。\[\begin{eqnarray*}
x^0 &=& e \\
x^{n+1} &=& x \cdot x^n \\
\end{eqnarray*}\]
このように関数が定義できることは、自然数の始代数的な性質から直ちに示せるのですが、ここでは直接関係しないので、他の記事に譲ります。また、この後に示すいくつかの性質も自然数の定義から証明することができます。
底と指数関数の関係
指数関数と底の間には次のような関係があります。\[ x^1 = x \]
つまり、1乗すると底になるということです。
指数法則
指数関数は次のような法則を満たします。\[ x^0 = e \\ x^{m+n} = x^m \cdot x^n \]
指数関数の一意性
底と指数関数の関係と指数法則を満たすような、自然数からモノイドMへの関数はただ一つしか存在しません。自然数と自由モノイド
底と指数関数の関係、指数法則、一意性というこれらの条件が自然数が一元集合の自由モノイドであるということを意味しています。自由モノイドの条件とこれらの対応を確認しましょう。一元集合の自由モノイドであるとは次のように表されます。自然数は定数1が存在し、任意のモノイドMの元xに対して次のようなモノイド準同型x^ : N → M がただ一つ存在する。
\[ x^1 = x\]
底と指数関数の関係はほとんどそのまま表れているのが確認できるでしょう。モノイド準同型であるというのが指数法則に対応しています。一意性についても同じです。
補足
文字列の場合は文字集合を基底とする自由モノイドが文字列になります。このとき変化しているのは基底です。その結果、定数1とモノイドの元xという部分が変化します。文字列における定数1に対応するのが挿入関数(文字を長さ1の文字列に返す関数)です。また、モノイドの元xは、文字からモノイドへの任意の関数に変わります。詳しくは、別の記事で整理しているのでそれを参照してください。
自由モノイドについて
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